公開日:2024/02/22
技術コラム Vol.16「AI処理にも対応!高性能MCU「RA8」の概要」では、ルネサス エレクトロニクス社(以下、ルネサス社)の最新MPU「RA8シリーズ」の概要とArm Helium™テクノロジについてご紹介いたしました。
今回は後編として、当社のRA8搭載ボードと「RA8」の性能を活かしたアプリケーション例を中心にご紹介いたします。
1. RA8マイコンの概要
(1)CPUの概要
当社ではRA8シリーズ搭載製品としてRA8M1搭載「AP-RA8M-0A」とRA8D1搭載「AP-RA8D-0A」の2製品を2024年2月10日に発売いたしました。
RA8M1とRA8D1は、ともにCortex-M85を内蔵し演算性能は同じですが、インタフェース(I/F)機能が異なっています。
以下が「AP-RA8M-0A」と「AP-RA8D-0A」の主な機能です。
項目 | 仕様 | AP-RA8M-0A | AP-RA8D-0A |
---|---|---|---|
CPU | RA8M/RA8D | Cortex-M85 480MHz | |
FlashROM | CPU内蔵 OctalFlashROM |
2MByte 32MByte |
2MByte 64MByte |
RAM | CPU内蔵 外部SDRAM |
1MByte 32MByte |
1MByte 64MByte |
Ethernet | 10/100BASE | x1 | |
USB I/F | USB2.0 Host USB2.0 Host/Function |
x1 x1 |
|
カメラ I/F | YUV8bit | x1 | |
LCD I/F | RGB666 MIPI DSI |
N/A N/A |
x1 x1 |
Pmod I/F | UART/SPI/I2C/GPIO | x2 | x1 |
SDカード I/F | microSD | x1 | |
シリアル I/F | SCI | 最大10ch | |
CAN I/F | CAN FD | 最大2ch | |
JTAGコネクタ | CoreSight | 10pin | |
電源 | - | DC5V(I/O3.3V) |
機能の違いとしては主に外部メモリ(FlashROM、SDRAM)のサイズとLCD I/Fの有無、Pmod I/Fの チャネル数になります。
RA8D1は、LCD I/Fを備えており、HMIなどディスプレイを使用するアプリケーションに適しています。
表示データなどで、多くのメモリを使用することが想定されるため、「AP-RA8D-0A」のメモリサイズは
大きくなっています。
一方、「AP-RA8M-0A」は、ディスプレイ機能がない代わりに、より汎用的な使い方ができるように、Pmod I/Fを2つ搭載しています。
(2)RA8シリーズのサンプルプログラム
当社のAP-RA8M-0AとAP-RA8D-0Aでは、各CPUボードで動作するサンプルプログラムを提供しています。
RA8シリーズCPUボードでは各サンプルプログラムを以下の通りに準備しています。
各サンプルプログラムは、ルネサス社が無償で公開している開発環境「e2studio(コンパイラはGCC)」を使用しているので、CPUボードのほかにデバッガをご用意いただければ、すぐに動作を確認できます。
サンプルプログラム種別 | 確認機能 | AP-RA8M-0A | AP-RA8D-0A |
---|---|---|---|
メモリ・インタフェース | UART通信 | 〇 | 〇 |
CAN/CAN FD通信 | 〇 | 〇 | |
SDカードのR/W | 〇 | 〇 | |
USBメモリのR/W (USBホスト機能) |
〇 | 〇 | |
仮想COM通信 (USBファンクション機能) |
〇 | 〇 | |
Ethernet通信 | 〇 | 〇 | |
Pmod | Pmod 8LD (LED点灯) |
〇 | 〇 |
Pmod OLEDrgb (OLED表示) |
〇 | 〇 | |
Pmod USBUART (USB-UART変換) |
〇 | 〇 | |
Pmod ToF (距離センサ) |
〇 | 〇 | |
US082-HS3001EVZ (温湿度センサ) |
〇 | 〇 | |
US159-DA16200MEVZ (無線LAN通信) |
〇 | 〇 | |
ディスプレイ・カメラ | 画面出力 (LCD-KIT-B01/C01/C02/D02) |
✕ | 〇 |
画面出力・カメラ入力 (LCD-KIT-B01/C01/C02/D02・CMOSカメラ) |
✕ | 〇 |
- ※2024年2月現在の公開サンプルの状況です。
サンプルプログラムの詳細は各CPUボードの製品ページにあるサンプルプログラム解説書をご確認ください。
また、サンプルプログラムの使い方として、チュートリアル資料「AN2002 RAファミリ開発チュートリアル」も用意しています。
CPUボードのハードウェアマニュアル・サンプルプログラム解説書は、CPUボードをご購入前の方でもご確認できるので、ご一読ください。
2. RA8シリーズの使用例を考えてみる
サンプルプログラムは、CPUボードに付属するI/Fの確認が行えるように一通り用意しています。
実際にユーザーがアプリケーションを開発する場合には、これらのサンプルプログラムを利用することで、効率的に開発を進めることができます。
ここではサンプルプログラムを組み合わせた、プロトタイプ開発例をご紹介します。
(1)Pmodモジュールを利用した温湿度監視装置(AP-RA8M-0A)
温湿度センサと無線LANは市販のPmodモジュールを利用します。
センサは、二酸化炭素センサなど、別のPmodに入れ替えることで、監視対象を変えることができます。
Pmodについては「技術コラム Vol.12 Pmod™でサクッとプロトタイピング!」でも紹介していますが、様々なセンサ製品が発売されているので、パズル感覚で様々な機能を組み合わせて試すことができます。
また、近年問題となっているネットワーク機器のセキュリティですが、RA8シリーズが対応しているArm TrustZoneなどのセキュリティ機能を活用することで、セキュリティリスクを低減することができます。
■ センサ類を使用した応用例
- ビニルハウスなどで設置する環境センサ
- 工事現場などで設置する振動・騒音モニター
- CO2の濃度などの空気質を測定して動く自動換気システム
(2)CMOSカメラを使ったAI監視カメラ(AP-RA8D-0A)
RA8シリーズの場合、前回紹介した「Arm Heliumテクノロジ」を活用することで、従来のRAファミリでは厳しかった画像解析も実行可能であり、多様なシーンでの運用が可能です。
ただし、リアルタイムの動画の画像解析は、負荷が非常に重く、より高性能なCPUと大容量のメモリが必要となりますので、RA8には不向きです。RA8での画像処理は、秒単位での静止画レベルの用途と考えた方がよいでしょう。
カメラ入力から画面出力、そして外部メディアへの保存などは、すべてサンプルプログラムを参考にできますので、用途に合わせた画像解析プログラムを追加することで、AI監視装置を作成することができます。
また、Ethernet機能を使えば、ネットワークに撮影データをアップロードする機能なども実現することができます。
■ 使用シーン例
- 顔認証システム
- 河川監視・警報システム
- 異物検査システム
- バーコードリーダー
3. まとめ
今回は、RA8シリーズの紹介の後編として、RA8マイコンのサンプルプログラム紹介と、組み合わせ使用例を紹介いたしました。
当社では「AP-RA8M-0A」「AP-RA8D-0A」の2製品を発売しており、どちらもArm HeliumテクノロジやPmodが使えて様々なシーンでの利用が考えられます。
RA8シリーズでも、他のRAファミリ同様にルネサス社からFSPの提供がされており、難しいデバイスドライバやOSの実装もGUIで比較的簡単に行えるのも魅力的です。
当社はサンプルプログラムのほかに回路図も提供しており、教育用途・評価用途にも最適ですので、ぜひRAファミリの最上位である RA8シリーズCPUボードをお試しください。
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- ※Arm, TrustZone, HeliumおよびCortexは、米国および/またはその他の地域におけるArm Limited(またはその子会社)の登録商標です。
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